セミナー情報
2025年5月14日 (水) 14:15 - 15:30 |
F313 | 星野洋輔 (名古屋大学高等研究院) |
生命の進化はどこまで読み解けるか? — 遺伝子と化学化石に残された痕跡をたどる |
生命を構成するすべての生体物質は進化の産物であり,その存在自体に現在まで蓄積されてきた進化の歴史が反映されている.研究の対象となりうるのは,生体物質の生合成経路,個々の合成酵素に加えて,合成される生体物質の化学構造も含まれる.特に、一部の生体物質は保存状態のよい地層中であれば億年スケールで保存され,化学化石(バイオマーカー)として”発掘”することができる.現在見つかっている確実かつ最古の化学化石は原生代の16億年前のものである.原生代は,生態系の主役が原核生物から真核生物へと移っていく転換期であったと推測されており,化学化石は真核生物の出現過程と動向についての貴重な情報源となっている.一方,元となった生体物質の合成酵素群の遺伝子情報をたどることで,その生体物質が生物界の中でどのような生物に分布してきたのか,さらにその生体物質が時間とともにどのように構造的に変化してきたかさえ推測することができる.今回の講演では,化学化石によって太古の生命の姿を明らかにする地球生物学と,その背景でいかなる分子進化が起きていたかを解明する分子生物学を組み合わせることで,原生代から今日まで,生命の進化がどこまで解き明かされてきたのか,そして解き明かせるのかを議論したい. | |||
2025年5月14日 (水) 13:00 - 14:00 |
Online | 宮城島進也 (国立遺伝学研究所) |
光共生による水圏微生物の貧栄養環境への適応と物質循環 |
光共生とは,従属栄養性の真核細胞(宿主)と独立栄養性の単細胞藻類(細胞内共生体)との共生系であり,真核生物のさまざまな系統で独立に進化した現象である.近年の地球規模の解析により,光共生は餌や栄養源に乏しい環境で優占することが示され,特に外洋においてはバイオマスの大半を占めることが明らかとなってきたが,その理由は依然として不明である. この理由を明らかにするため,我々は,ミドリゾウリムシ(宿主,繊毛虫)とクロレラ(共生藻)を,窒素源および餌生物を含まない培養液中で培養し,宿主と共生体がどのように貧栄養環境で生育できるのかを調べた.その結果,貧栄養環境で有利に働くと考えられる,宿主と共生体間の物質循環様式を見出した. さらに,ミドリアメーバ(宿主,アメーボゾア)とクロレラ(共生体),タイヨウチュウ(宿主,有中心粒類)とクロレラ(共生体)の培養系も独自に確立し,宿主と共生体間の物質循環の一般性についても探索を進めている. 本発表では,これらの結果を紹介するとともに,光共生系がどのようにして貧栄養環境において優位性を獲得しているのかについて考察する. |